**confection**
息を飲んだ気配が、背後から感じられる。
いくつか言葉を投げ掛けられたが、耳になんて入ってこなかった。
もう俺の目には、ももの姿しか入っていないから。
「……なんで、ごめんなさい…」
「もう少し、考えてくれないかな」
「いや…その」
「おい、もも」
交わされる会話に、後先考えずに口を挟んでいた。
全身がピリピリしていて、何だか電気でも通っているみたいだ。
俺の言葉に目を向けた男と、バッチリと目が合う。
少し驚いたような顔をしているが、気にせずすぐに目を逸らす。
そしてそのまま、ももに目を向けた。
さぞかし驚いたように、大きく目を見開くももが俺を見上げる。
「…え…るぅ…?」
「勇磨の番号聞き忘れた。休み時間の内に連絡しようと思ってたの忘れてた」
「あ…う、うん…分かった。携帯教室で…」
「そうか。なるべく早く連絡したいんだけど」
何を言ってるのか、自分でもよく分からない。
突然そんな事を言い出した俺に対して、ももがコクコクと頷く。
そして、慌てたように俺から視線を離した。
その瞬間、スイッチが切れたかのようになぜか突然冷静になってきた。
……あれ!!俺ナニしでかした!?
え!!えええ!!??
あれ!!??
「あの!!じゃあ…すみません、これで失礼します」
「え…や、ちょっとま…」
「ご、ごめんなさい」
ペコリと頭を下げ、俺の腕を掴むとぐいぐいと引っ張り出す。
どうやら俺には、どこかに危険なスイッチがあるようだ。