**confection**




息を飲んだ気配が、背後から感じられる。


いくつか言葉を投げ掛けられたが、耳になんて入ってこなかった。


もう俺の目には、ももの姿しか入っていないから。



「……なんで、ごめんなさい…」



「もう少し、考えてくれないかな」



「いや…その」



「おい、もも」




交わされる会話に、後先考えずに口を挟んでいた。


全身がピリピリしていて、何だか電気でも通っているみたいだ。


俺の言葉に目を向けた男と、バッチリと目が合う。


少し驚いたような顔をしているが、気にせずすぐに目を逸らす。


そしてそのまま、ももに目を向けた。


さぞかし驚いたように、大きく目を見開くももが俺を見上げる。



「…え…るぅ…?」



「勇磨の番号聞き忘れた。休み時間の内に連絡しようと思ってたの忘れてた」



「あ…う、うん…分かった。携帯教室で…」



「そうか。なるべく早く連絡したいんだけど」




何を言ってるのか、自分でもよく分からない。


突然そんな事を言い出した俺に対して、ももがコクコクと頷く。


そして、慌てたように俺から視線を離した。



その瞬間、スイッチが切れたかのようになぜか突然冷静になってきた。



……あれ!!俺ナニしでかした!?

え!!えええ!!??

あれ!!??


「あの!!じゃあ…すみません、これで失礼します」



「え…や、ちょっとま…」



「ご、ごめんなさい」



ペコリと頭を下げ、俺の腕を掴むとぐいぐいと引っ張り出す。



どうやら俺には、どこかに危険なスイッチがあるようだ。
< 208 / 249 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop