『naturally』

「んじゃあ、改めて。妻のシェナだっ」


「お、お初に目にかかります……クロチェ国から参りましたシェナと申します……」


視線は二人から外れた自分の足元を見つめ、緊張で声を震わせたシェナがなんとか挨拶をしてみせた。


そんな初々しささえ二人には新鮮でめでたい。


「元親衛隊、なんて言うからどんな逞しいお嬢さんかと思ったら……とても可愛らしいお嬢さんだわ。リューシュにはもったいないわね?」


こう言って笑う王妃の顔は、どことなくリューシュの笑顔に似ていてシェナの安心感を誘った。


「全くだっ。こんなに可愛らしいお嬢さんが私達の娘になってくれたんだな。実にめでたい! 呑むぞリューシュ!」


こう言って上機嫌に笑う王が、気付けばリューシュの腕を掴み、自分の部屋の方へと引っ張り始めた。


「早速かよっ! 俺はシェナとゆっくりしてぇんだけど……」


「孫の顔が見たいのは山々だが、昼間っからそんなことせんでもいいだろっ。後だ後」


「そういう意味じゃなくてだなぁ~!」


リューシュの必死な抵抗も虚しく、二人はシェナと王妃と静寂を残しながら部屋を後にして行ってしまった。
< 52 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop