『naturally』

リューシュがいなくなった隣に、シェナは心細そうに立ち尽くしている。


「こちらに来て頂戴。シェナ」

「はい」


王妃の穏やかな口調と微笑みに誘われるままに、シェナは遠慮がちに王妃の隣へと腰を下ろした。


「ねぇ、シェナ。……リューシュはあなたの夫として、ちゃんとやっていけてる?」


「もちろんですっ。出逢った頃から変わらず優しくて、大切に想ってくれています」


赤面しながらも答えるシェナの口振りは、ハッキリとして自信に溢れていた。


それが母として嬉しいらしく、王妃は笑顔で何度も相槌を打っている。


「じゃあ、シェナは幸せなのね」

「はいっ。毎日が嘘みたいに幸せ、です……」


シェナの柔らかい顔。
一ヶ月前にはほとんど変わることの無かった表情が嘘のようだ。


「シェナ。……あなたは笑うことに慣れていないの?」

「えっ?」

「気に障ったらごめんなさいね? ただ、あなたがゆっくり思い出すように笑ってるように見えたから」


困ったように笑う王妃の言葉に、シェナの思考が一時停止する。


そしてゆっくりとその言葉の意味をかみ砕き、頭の中に送り込んだ。



……上手く笑えてなのだ、と。
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