『naturally』
「おっしゃる通りです……。リューシュに出逢うまでのわたしはずっと無感情で過ごしていたので」
「そう……。寂しかったわね」
「……わかりません。わたしはそれに長く慣れすぎていたから」
こう言って今度はシェナが困ったような笑顔を浮かべた。
リューシュと出逢ってからシェナは、こうして感情の一つ一つを確認し、思い出しているのだ。
「ねぇ、昔話をしてもいい?」
「……はい」
王妃の提案にシェナはゆっくりと頷き、その声に耳を傾けた。
「リューシュはね、小さい頃からやんちゃで、勉強なんてそっちのけで体を動かすのが好きな子だったの。変わらないでしょ?」
王妃に同意を求められ、つい笑顔で頷いてしまう。
確かに間違ってはいない。
不意に頭を掠めたのは、初めて逢ったときのこと。
いきなり一戦を申し込んで来たのは、後にも先にもリューシュだけだ。
「王子としての意識が強かった兄たちと違ってあの子はマイペースでね。でも、リューシュにはやりたいことを納得いくまでやらせてたわ。それが私達からの愛情表現だって思ってたから」
クスクスと小さく笑ってみせる王妃を、シェナはただ黙って見つめていた。