心 ―ハジマリノウタ―



私は静かに首を振った。


フェイクは、メイを確かに利用した。


しかし、彼らを、

私の大切な者たちを

救ってくれた。


私には、それだけで充分だった。




「フェイク、

アナタはもう私を救ってくれました。

ですから…」




言葉が途切れた。


フェイクが刹那に私を抱きしめたから。


そうして、彼は言った。


切な気な声がすぐ側で私に囁く。




「俺はただ君が欲しかっただけなんだ。

そのことで恨んでいるというのなら

許してくれ…」




その声は私が今までに

感じたことのない感情に溢れ、

私にはその思いを感じることはおろか、

想像することさえも、もう許されない。


けれど、それは仕方のないこと。


己の意思で選んだ道だ。


心が在れば、彼らの温かさを求めてしまう。


だから、心など、無い方がいい。




「私には、新しい居場所が必要でした。

あの場所ではない場所が。


私には…心などもう要りません。

許しなど、そもそも感情の無い私には

存在し得ないもの…」




もう気にしないで下さい、と私が言うと、

フェイクは切なさとはまた違った

哀しげな声で言った。




「ユア…

そんなこと言わないでくれよ。

俺は心を持った君の方が…」




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