感方恋薬-かんぽうこいやく-
そして、あたしの横に立って、何か言いづらそうにはしているが、何か話し掛けるきっかけを作ろうとしている。



あたしと紀美代はそれ程親密な関係ではない。


一日一回話すか話さないか、その程度の間柄なのだから、気軽に話し掛けるにはちょっと辛いのだろう。


それに今時珍しい三つ編に茶色く染めて居ない黒く艶の有る髪の毛、小柄で、ちょっと度の強そうな眼鏡。


あたしとは正反対に「真面目」と書いて「きみよ」と読む…見たいな感じの子なので、ちょっとおちゃらけた性格のあたしとは色々と接点が見つからない事が多い。


その紀美代が、あたしの眼の前で切羽詰まった表情で両手を唇の近くでもじもじと動かし視線を宙に泳がせながら口の中で、もごもごと何かを話したそうにしていた。
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