感方恋薬-かんぽうこいやく-
「構いません、お願いします!」


紀美代は両手を膝に付けて深々と一礼すると、周りをちょっと気にしながら、ちょこちょこと自分の席に戻って行った。


まったく、そんな仕草が出来るんなら、ほんと、直接話した方が効果有るぞ。冗談抜きで。


そう、思った時、あたしは誰かに、バスンと背中を叩かれた。


「そういう訳だから、宜しく頼むわ!」


則子だった。


あたしは即座に後ろを振り向く。


「則子~、あんたねぇ!」


しかし、則子は悪びれる事も無く、いとも簡単に答えて見せた。


「なに?別に良いじゃない。私には効果有ったんだからさ。きっと紀美代にも効果あるよ。なんせ実績作っちゃったんだから!」
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