感方恋薬-かんぽうこいやく-
あたしは又しても飛び退いた。


弟が何時の間にかあたしの後ろに、ぬぼっと立って、何してんだという眼で見詰めながら立って居たからだ。


弟よ、おまえ、気配を消す修行でもしてたのか?


「な、何でも無い、それじゃ~ねぇ」


と、にこやかに手を振りながらあたしは自分の部屋に向って歩き出した。


しょうがない、修行しなおして出直そう。今日の事は聞かなかった事にしてやる。


それと則子だ。あいつがべらべら喋ってしまったら折角、姉のあたしが見逃してやろうと言う事が噂だけ独り歩きする可能性が有る。
< 163 / 327 >

この作品をシェア

pagetop