感方恋薬-かんぽうこいやく-
と、言う弟の叫びを無視して、あたしは弟に背を向けると。


奪い取った1000円札をひらひらさせながら、それを見せびらかすが如くに弟の部屋を後にした。


「薬の効果は別として、元手は掛かってんじゃい」


弟の部屋のドアを閉めると、あたしは高らかに宣言した。


「あんまり、非道な事はせん方が良いと思うがのう…」


耳元で爺の声がした。


あたしは、不意打ちをくらっても、もう驚くことは無い。


「非道だなんて、そんな事ないでしょ。だって、材料使い果たしちゃったし、仕入れの元手は必要なのよ」
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