感方恋薬-かんぽうこいやく-
おそらく、彼女からすれば、あたしにこんな事を言うのは余程勇気が必要だった筈だ。


あたしは泣きながらへたり込んでいる紀美代を見て居る事しか出来なかった。


         ★


ひとしきり泣くと、紀美代は落ち着きを取り戻したのか、その日はおとなしく帰って行った。


あたしも、何とか帰宅して自室に戻ると、制服を着替える事も無く、そのままベッドにごろんと横に成った。


「紀美代は幸が好きなのか」


言うとも無しに、そう呟くと、さっきの紀美代の言葉や行動を思い出していた。


「宣戦布告って…あたしに意地悪してくるのかなぁ」


紀美代は頭脳明晰で頭の切れる子だ。


成績も良いし、どんな頭脳プレーで来るのか予想が出来なかった。


それを考える事自体が頭痛の種だったし。
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