感方恋薬-かんぽうこいやく-
あたしは勇んで学校を後にした。そして誓った。紀美代、あなたには負けないからね。


         ★


そしてその日の深夜となった。


あたしは台所で鍋を沸騰させると、惚れ薬の材料を放り込んで、シナモンスティックで掻きまわし始めた。そして、精神を集中して呪文を唱える。


サチュロス・ボルグ・ギルヴ

サチュロス・ボルグ・ギルヴ

サチュロス・ボルグ・ギルヴ…


暫くすると背後に人の気配。この気配は爺だ。


「うむ、かなり板に付いて来たのう」


あたしはシナモンスティックの動くを止めず鍋に視線を落としたまま爺に答えた。
「この薬に関しては完璧だと思うわ。自分で言うのも何だけど」
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