感方恋薬-かんぽうこいやく-
「さ、幸雄さん…」


紀美代の表情が一気に曇る。


その雰囲気にあたしは耐えられない焦燥感を感じて居た。


そして、紀美代の瞳からは大粒の真珠が止め処無く流れ落ちた。


「はい、勝者たかこ~」


ふいにあたしの右手が誰かに掴まれて大きく掲げられた。


「と、言う訳だから勝負はこれで終りね」


則子だった。


あたしの手を高々と掴んで上げたのは。


そして勝負の終了を宣言したのも。
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