平安物語=短編集=【完】



「宮様の、紅葉のお屋敷の姫君を頂きたいのです。」

真面目に言ったのだが、父宮はぽかんと口を開けて私を見た。


「あ、え?
紅葉の屋敷の…は、ええ。
確かに私の娘…ですが」

しどろもどろになっている父宮に、にっこりと笑いかけた。


「しかしあの娘の母は身分の低い人でしたから、宮様には不都合かと存じます。
こちらの中君ではいかがでしょう?
母は大臣の娘ですし…親馬鹿ではございますが、それなりの娘に育っております。」

「いえ、お気持ちは嬉しいのですが紅葉の姫君をお慕いしているのです。
あちらにはもう手紙など差し上げているのですがあまり手応えがこざいませんで、出来れば父宮からもご協力頂けませんか。」

父宮の言葉を流してお願いすると、言葉を濁して誤魔化された。



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