平安物語=短編集=【完】
***
「嫌です。」
「姫様……」
溜め息をついて、乳母が出ていきました。
手紙を書きに行ったのでしょう。
「姫様、どうしてお嫌なんですか?
みんな喜んでますよ?
式部卿宮様なんて、願ってもない御結婚相手だって。」
犬君が首を傾げて言いますが、微笑んで頭を撫でながら黙っていました。
十数日前に式部卿宮様とかいう方からお手紙を頂いて、それ以来この騒ぎなのです。
何度か乳母が代筆でお返事を差し上げていますが、もう私が直筆で差し上げろと言い始めました。
確かに、式部卿宮様はもったいない程高貴で素晴らしいお方と聞きます。
しかし、私には…
あの紅葉の別荘で逢った、お名前も明かしてくださらなかったあのお方との約束がございます。
だから、慣れないことですが、無理矢理頑固に拒み通しているのです。
「嫌です。」
「姫様……」
溜め息をついて、乳母が出ていきました。
手紙を書きに行ったのでしょう。
「姫様、どうしてお嫌なんですか?
みんな喜んでますよ?
式部卿宮様なんて、願ってもない御結婚相手だって。」
犬君が首を傾げて言いますが、微笑んで頭を撫でながら黙っていました。
十数日前に式部卿宮様とかいう方からお手紙を頂いて、それ以来この騒ぎなのです。
何度か乳母が代筆でお返事を差し上げていますが、もう私が直筆で差し上げろと言い始めました。
確かに、式部卿宮様はもったいない程高貴で素晴らしいお方と聞きます。
しかし、私には…
あの紅葉の別荘で逢った、お名前も明かしてくださらなかったあのお方との約束がございます。
だから、慣れないことですが、無理矢理頑固に拒み通しているのです。