平安物語=短編集=【完】
右近こそ、何かあのお方の事を知っているだろうと思うのですが、乳母の侍従が
「この有り難いお話が駄目にならないよう、軽率な手引きなどは決してしないように。」
と言って、特にそういう事をしてしまいそうな右近を、さり気なく私から遠ざけているのです。
右近も何か言いたそうに私を盗み見ていると思うのですが、どうしようもありません。
しかしある日、どうしても打ち捨てておけない用事が出来たとかで、侍従が、非常に残念そうに里へ戻りました。
ここぞとばかりに、その夜右近を呼びつけました。
侍従と親しい古参の女房は警戒したように右近を見つめましたが、私が来て欲しいと言ったのですから、それに反対する権限はありません。