准教授 高野先生のこと
車のいいところって向かい合わずにすむところかも。
私はべそべそと泣き、ごしごしと泪を拭い、声を殺すことに集中した。
そのあいだ、先生はただ黙って安全運転に集中した。
車の中には相変わらず由貴ちゃんの歌声が流れている。
「詩織さんの話し方って……」
“そういえば”みたいに、ふと思い出したような先生の言い方。
「なんかすごくいいんですよね、とても。うん……とてもいいと思うんです」
先生は確かめ確かめ“何か”納得したようにそう言った。
そして――
私にその“何か”が何なのかを心をこめて話してくれた。