准教授 高野先生のこと
これが初めての恋の私はとても不慣れなことばかり。
男の人に優しくされるのも、甘えるのも。
もちろん、褒められるのも……。
先生はすーっと左に車を寄せて路肩に止めた。
「泣いてしまったのは、僕を怒らせてたり、或いは、傷つけたりしたと思ったから?」
私のことを咎めたりしない優しい言い方。
そっと覗き込むように、ちょっと心配そうな顔をして静かに私を見つめる高野先生。
「私、すごく嫌な言い方しちゃって……」
あんな……あんなこと……決して本心なんかじゃないのに。
先生の心が他の誰かに持っていかれていいはずなんかない。
「気に、しすぎです」
先生の手が、そっと私の髪に触れる。
「でも……」
「言葉の怖さを知っている人は、誰よりも自分の失言に傷ついてしまうんですよね」
先生はそう言って労わるように私の髪を優しく撫でた。
先生の心が私の心に寄り添ってくれた……。
そんな気がした。