准教授 高野先生のこと
わざと、ちょっと拗ねたように言ってみる。
「私の話し方って、ぜーんぜん若者っぽくないですもんね」
「そんな……誰かさんみたいに二言目には“やばい”って言うよりずっといいです。しかも、あいつは若くもないのに」
“あいつ”というのは森岡先生のこと。
“やばい”と“超~”は森岡先生の口ぐせなのだ。
今度はわざとツンとして、フンと鼻をならしてみせてみる。
「私にはああいう言葉は難しくて、とてもじゃないけど使いこなせないんです」
「そういう切り返し方っていいですね」
まるで小学校の先生の褒め方みたい。
「ほんとに誉めてくれてます?」
「ほんとに誉めていますよ」
ちょっとあやしいもんだ。
もちろんすごく嬉しいけど。
先生はとっても楽しそうでニコニコだ。
「ほんと、僕的には詩織さんの話し方ってかなり……“やばい”です」
先生は冗談みたいにそう言って朗らかに笑った。
だけど――
私は笑えなかった。