准教授 高野先生のこと

わざと、ちょっと拗ねたように言ってみる。

「私の話し方って、ぜーんぜん若者っぽくないですもんね」

「そんな……誰かさんみたいに二言目には“やばい”って言うよりずっといいです。しかも、あいつは若くもないのに」

“あいつ”というのは森岡先生のこと。

“やばい”と“超~”は森岡先生の口ぐせなのだ。

今度はわざとツンとして、フンと鼻をならしてみせてみる。

「私にはああいう言葉は難しくて、とてもじゃないけど使いこなせないんです」

「そういう切り返し方っていいですね」

まるで小学校の先生の褒め方みたい。


「ほんとに誉めてくれてます?」

「ほんとに誉めていますよ」


ちょっとあやしいもんだ。

もちろんすごく嬉しいけど。



先生はとっても楽しそうでニコニコだ。

「ほんと、僕的には詩織さんの話し方ってかなり……“やばい”です」

先生は冗談みたいにそう言って朗らかに笑った。


だけど――

私は笑えなかった。



< 152 / 462 >

この作品をシェア

pagetop