准教授 高野先生のこと
瞬間、凍りつくような張り詰めた緊張感が走り――
それから……空気が重たく淀み始めた。
「遅すぎ、ですよね……?」
みるみる顔があつくなり、体の輪郭が強張るような緊張に包まれる。
先生の存在を隣りに感じながら、まったくそちらを見ることなく。
私はただ黙々と歩いた。
まるで交互に繰り出すつま先の動きを確認するみたいに、ずっと俯いたまま。
だから当然、先生がどんな様子かなんて、ちっともぜんぜんわからない。
「それは……随分とまた最近の話ですね」
先生の話し方には、明らかにおかしな間があって――
先生を追い詰めた、追い込んだ……。
そんな気がした。