准教授 高野先生のこと
外から帰ったばかりで、ひんやりとした夜気を纏った先生のカラダ。
「お外、寒かった?」
「少し。あっ、君はせっかくあったまったのにね」
先生がそう言って、そーっと体を離そうとしたから――
「大丈夫ですっ、ぜんぜん」
許すまじ!はがれまい!とするように私は先生に抱きついた。
「子どもは体温が高いんです」
貧相な犬は、どうやら仔犬だったらしい。
しかしまあ、なんとも無茶な言い訳だ。
「子ども、なんですか?」
「子どもです、ぜんぜん……」
しがみついたまま、先生の顔を見ないまま、私は頑固にそう言い張った。
先生はそんな私をたしなめることもせず、何も言わずぎゅっと強く抱きしめた。