准教授 高野先生のこと
ここは典型的な郊外型の大型ショッピングモール。
広い駐車場を有しているけど、逆に車がないと来るのが難しい場所だった。
「私、来たことなかったんですよ」
「僕は3回目。あっ、先に靴の修理出してもいいかな?少し時間かかると思うし」
修理といっても別に壊れたわけではないのだ、と先生は言う。
「滑り止めの加工を頼みたいだけなんだ」
「滑り止め?」
「来月、同期の結婚式で札幌なんだよ」
「同期って大学院のですよね?」
「そう。今は道内の大学で教員してる」
「じゃあ、森岡先生も一緒に?」
「うん。向こうで夏川君にも会うと思う」
「北海道かぁ」
「これで同期の中で独身は僕だけだ」
先生はそんなことを言いながら、私に暢気な笑顔を見せた。
カウンター越しに靴底の相談をする先生を遠巻きに眺めつつ考える。
先生とずっと一緒にいたい。
それってつまり先生と結婚したいってことなの?そうなの?
状況的にも年齢的にも私にとってはとても現実的で切実なお話。
だけど……。
なんだろう?このもやもやとした感じは。
私の心は妙な焦燥感にざわざわ揺らいでいた。