准教授 高野先生のこと

なんだかとても焦っていたのだ。

先生と歩調が合っていないような気がして。


ちゃんと合わせておかないと……。

今、合わせられないと……。

どんどんおかしくなってって……。

たいへんなことになってしまうような、そんな気がして……。


幼稚園の子ども同士なら“結婚しようねーっ!”て。

無邪気に言って笑い合ったりできるのかも。


中高生のカップルなら“将来のことなんて、ねぇ”と。

暗黙のうちの了解でそれに触れずにいられるのかも。

だけど……。

「詩織ちゃん」

先生の表情が一瞬ずきんと傷ついたように見えた。

「あの、嫌とかそういうんじゃなくて……」

何を言っても取り繕いようがないようで、自分で自分が悲しくなる。

「ちょっと、休憩しようか」

悲しがる私を見つめる先生が、いつもと同じ私の知ってる優しい先生だったから。

だから私は余計に悲しくなって、すごくすごく胸が痛んだ。


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