准教授 高野先生のこと

私は生来真面目だけが取り柄の慎重な人間で。

そういう性格だから――

人生に過剰な期待をしたり?壮大な夢見たり?

そんなことには無縁に地味にやってきた。

多くを望んだり?頑として自分を通すために戦ったり?

そういう主体性や積極性にいまいち欠けていたのである。


だけど……。

「先生、私ね色んなタイミングを逃したくないなって思うんです。絶対に」

恋の力はとっても偉大。

地味な小心者を勇敢な冒険者へと変貌させつつあった。


今まで、失敗や失望を怖がって私はいつだって冒険を避けてきた。

経験してきた数少ない勝負は、自分の勝ちの決まったようなものばかりだったし。

何事においても余裕がないと心配で、全力を尽くさなくても済むほうを選んできた。

よくいえば、とにかく正しい意味で適当で。

“ほどほど”こそが素晴らしい、と。

何かに懸けて死に物狂いになったこともなければ?

もちろん人生を賭けた大勝負なんてしたこともない。

だけど――

先生と出会って、恋をして変わった。

正確には変わらざるをえなかったのだ。


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