准教授 高野先生のこと
話の先を促すことなど当然できるわけもなく。
私は先生の様子をただ窺がっていた。
すると森岡先生は――
「出会いのきっかけが教員と学生だったっていうのは別にアリだと思うんだよ」
作業をすすめる手はそのままに私を見ずに淡々と話しはじめた。
「中学高校とは違って年齢的にも大人だし。
好きになった人が教え子だっただけ、ってね。
たださ、相手がまだ学生のうちに手を出すってのがオレは納得いかないんだよね。
だってさ親御さんにとっちゃあね、宝物なんだよ?
学生さんを預かるってことはさ、その大事な宝物をお預かりするってことだからね。
親御さんはさ勉強させる為に高い金払って大学へやってるわけで。
教員風情なんぞと恋愛させる為じゃあないんだから。まったく、言語道断だよ。
若輩ながらオレも娘ができて人の親になってみてさ、余計にそんな風に思うわけ。
だからオレ的には?いくら好きになっちゃっても卒業するまでは待つべきだって。
相手に好意を伝えるべきじゃないし、相手に好意を求めるなんざもってのほか。
公では学業の評価とかして?プライベートでは恋愛して?そんなの有り得ないって。
勤務先の学生に手を出すなんざ、お客様に手ぇ出すのを同じことさ。
道義的な問題だよ。親御さんにさ、どうしたって言い訳しようがないだろ?」
「はぁ……」
なんと答えてよいかわからず、私はふにゃりと曖昧な表情を浮かべた。