准教授 高野先生のこと
私は居た堪れなくて高野先生の観察どころじゃなくなっていた。
はじめは真中君が気をつかって一緒にいてくれたけど――
「私はいいから。真中君は色んな人と話してきて」
「でも……」
「人脈づくりは大事だよ。ねっ?」
私と違って真中君は将来この業界でやっていこうとしている人だから。
こういう場では業界内の人事の話しとか色々有益な情報が得られるみたいだし。
真中君には迷惑かけたくないな、と。
彼の背中を押して自分はそっと会場の隅に引っ込んだ。
疲れも出できていたし、タイミングを見てちょっと気分転換に会場を出た。
探検よろしくフロアの廊下をぷらぷら歩く。
そうしているうちに、小さなエレベータホールに行き着いた。
フロア奥のその場所はガラスばりで景色がよく、しんとひっそり静かだった。
そっか、もうひとつ別にメインのエレベータがあるんだものね……。
会場へ上がってくるのに乗ったのはそちらの大きなエレベータだった。
だからだろうか?
妙に静かで、人や物が動く気配があまりない。
エレベータに乗ろうとする人が現れる気配も。
エレベータがとまって誰かが降りてきそうな気配も。
なんだかまったく感じられない。
それにしても疲れたなぁ……。
申し訳程度に置いてあるスツールに、ゆっくりと腰をおろして一息つく。
今日はじめて、ようやくほっと落ち着けたような……そんな気がした。
そのとき――