准教授 高野先生のこと
1.


鈴木詩織さま

こんな風に改まって手紙を書くなんて、

なんだかちょっと照れくさいけど、

頑張って書きます。

並木先生の研究室で初めて出会った時、

君はかつての大勢の教え子の中の一人で、

面識はないけど同窓の普通の後輩でした。

僕の研究室に、初めて君が来てくれた日、

僕を忙殺していた退屈極まりない仕事を、

君は、まるで歌うように楽しげに軽やかに、

あっという間に片付けてくれましたね。

僕は、君の丁寧な仕事ぶりに感心しつつ、

楽しそうな横顔を微笑ましく見ていました。

君の可愛らしい言葉遣い、柔らかな仕草、

言葉をよく選んでゆったりと話す感じ、

そこはかとなく漂う穏やかな安心感、

気遣いの要らない程よい距離感、

君といると、沈黙さえも心地よくて、

僕は、すっかり心を許し和んでいました。

そんな自分に、とてもとても驚いて、

そして、君は僕の気になる人になりました。


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