准教授 高野先生のこと

「顔を見れば、あなたが悩み相談に来たのではないことくらいわかりますからね」

「えと……それはそのとおりです、ハイ」

「とてもいい顔をしているなと思いました。大学院でも頑張っておられるのですね」

「ぜんぜん、だめだめですけど、でも……」

「いい友人に恵まれましたか?」

「えっ?あ、ハイッ」

「いい先生にも、出会われましたか?」

「ハイ、そうです。けど、先生なんで……???」

「あなたはそういう縁を大事にして、自分の味方にできる才能がある」

「縁を味方に、ですか?」

「そうですよ。その偶然の出会い、縁という恵みに感謝して大事に育てる才能です」

「そんな……買いかぶりすぎです」

「だって、あなたはこうしてぼくを訪ねてきてくださった」

「え?」

「あなたは人に受けた恩を忘れない人です。

縁を枯らさない、絶やさない。

そうして大事に育てていけば、いつか必ず美しい花を咲かせ豊かな実を結びます。

その縁はきっとあたなの大きな助けとなり、大きな恵みをもたらすはずですよ」


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