准教授 高野先生のこと

先生は何でもお見通しの神様か仙人のように有難いお言葉をくださった。

「その素晴らしい才能だけは、ずっと変わらずに持ち続けていただきたいですね」

「なんだか、もったいないです」

「その才能はきっとあなたを良い方向へ導いていってくれるはずですよ。

研究も仕事も、ひょっとしたら恋愛もね」

恋愛も、だなんて……。

私はかしこまって肩をすぼめるようにして、さらにさらに恐縮した。

「そうだ、鈴木さんにいいものをさしあげましょう」

「え?」

「お友達かご家族か、よかったらどうぞ贈ってさしあげてください」

先生が下さったのは同窓会館で売っている大学オリジナルのクリスマスカード。

「ありがとうございます。あの、私も先生にお渡ししたいものがあって……」

「ぼくに、ですか?」

「ハイッ!先生に、です」

私はあらかじめ用意してきたクリスマスカードを遠慮がちに差し出した。

「これは有難うございます。後でゆっくり拝見させて下さい。それはそうと……」

「?」

「ぼちぼち礼拝堂へ行きましょうかね」

いつの間にか、時計の針はクリスマス礼拝が始まる時刻に近づいていた。


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