准教授 高野先生のこと

それは、とても過酷で信じがたく、本来は絶対にあってはならないことだった。

田丸先生の奥さん……深雪さんのご実家は両親と祖父母と弟の6人家族。

あまりにも極端に長男を重んじる異常な家の中で、

同じ実の子であるにもかかわらず、深雪さんは軽んじられて育ってきた。

着る物、食べる物、寝起きをする部屋、何だって弟とは雲泥の差。

本来は普通に与えられるはずのものすべて、そう、親の愛情さえも……。

祖父母と母は弟を溺愛し、父は無関心だった。

深雪さんは、家庭の中で区別という名の明らかな差別を受け続けてきたのだ。

いくら頑張っても褒めてはもらえず、ちょっとした失敗でこっぴどく怒られた。

愛されぬ理由もわからぬまま、子どもだった深雪さんは愛を求めて苦しんだ。

しかし、彼女がいくらもがいても状況はいっこうに好転せず……。

高校には行かせてもらえた。両親がご近所の目や世間体を気にしたから。

彼女は真面目で成績優秀だった。奉仕活動等にも積極的で素行も良好。

劣悪な家庭環境にありながら彼女がグレずにやってこられたのは、

心の支えになってくれる友人達や、先生方に恵まれたからだという。





< 432 / 462 >

この作品をシェア

pagetop