准教授 高野先生のこと
母親は、深雪さんの大学進学のために出せる金など一円もないと言った。
弟は、私立高校に通い、予備校にまで行っているのに……。
もろもろの事情を知っていた高校の担任教諭は彼女の為に考えた。
何がなんでも深雪さんは家を出るべきだ、と。
奨学金制度や、特待生制度、学生寮の有無、深雪さんの可能性を潰すまい、と。
先生は手を尽くして、親身になって深雪さんと一緒に考えた。
そして――
その結果が、田丸先生のいるG学園大学短期大学部の保育科の推薦合格だった。
両親への説明と説得も、先生が買って出てくれた。
両親の反応は悲しいくらいあっさりしたものだったという。
金の面倒さえかけないのなら勝手にすればいい、と。
深雪さんは家族に見切りをつけて、友人や恩師に背中を押してもらって、
新しい自分の人生を歩き出そうと、大きな一歩を踏み出したのだった。