准教授 高野先生のこと

私はまったく信じられず、頭の上に中に、疑問符がいくつも浮かんでいた。

「どうして?実の親子なのに、そんなことってあるものなの?理由は?なんで?」

「理由は無いか、あるいは複雑すぎてわからないか……。

母親が息子を、とくに長男を溺愛して他の子をないがしろにするというケースで。

これはよそでも意外とある話らしいんだよ」

「そんな……」

「ひどいよね。絶対にあってはいけないことだよ、本当に」

「あ、奥さん……深雪さんて保育科の学生さんだったんですね」

「うん。田丸は児童文学が専門だからね。保育科の授業も持っていたんだ」

「じゃあ、その授業を通じて知り合って、お互いに???」

「うーん、それがねぇ……」

歯切れ悪く、続きを言い辛そうな寛行さん。

「具合が悪くてうずくまっている深雪さんを助けたのがきっかけだったらしいんだ」

「うずくまっていたって……」

「慢性疾患の類の病気なんだって。入院の必要はないけど、長い経過観察が必要な」

「そんな、せっかくおうちを出られて新しい人生を始められたのに……」

私は悲しくなって、やりきれない腹立たしさでいっぱいになった。



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