准教授 高野先生のこと

「あのね、私も寛行さんにプレゼントがあるんだけど……」

「君から?トナカイからじゃなくて?」

「もうっ!私からです」

「ごめんごめん。嬉しいなぁ」

「けど、あとで渡しますね。だから、もう少しこのままでいさせて欲しいです」

彼の体にぴったり寄り添い、しがみついてくんくんする。

くんくんしながら、ふと考える。

今夜こそ、頑張って行動を起こすべきではないか?と。

なんだかんだで実行できず、うだうだと先送りしていたこと。

そう、秋ちゃんに教わった“おねだり”作戦?である。

たぶんいつもの展開だと、これから普通に二人で歯磨き。

それから、やっぱり普通にベッドに入って。

そして、なんとなーく、それとなーく、そんなふーに……。


いやいやいやいやいや、それじゃあダメだ、ダメなんだ!

逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……。

某アニメの14才の少年よろしく私は何度も心の中でそう唱え、自分を鼓舞した。

「寛行さん、あのね……」

「ん?」

「あの……今日ね、歯磨きしたら、ね……」

「?」

たった一言なのに!たった一言じゃないか!!

たった一言なんだぞ!!!頑張れ、私!!!!
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