僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
どうして平然と、金銭的な話だと言えたんだろう……。
何も悪いことではないと、遠慮することもないんだって思ってるのが分かる。
帰ってくださいと言ったあたしと祠稀を、おばさんは恨めしげに睨んでいた。
……憶測でしか、ないけれど。この育ての親だと言うふたりは、彗が持ってるお金を求めてやって来たんだ。彗が連絡を返さなかったのも、それが嫌だったから。
きっと彗が持ってるお金は、ご両親の遺産だ。
グッと唇を噛んで、あたしはもう一度頭を下げる。
「本当にごめんなさいっ! 帰っていただけますか!」
あたしの必死の言葉は、玄関から響く明るい声とかぶった。
「たっだいま〜! 祠稀ー、有須ーっ! 誰か来てんの〜?」
開けられたドアからリビングに響く凪の明るい声に、あたしと祠稀は顔を見合わせる。
凪と……彗が、帰ってきてしまった。
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