僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ

痛む傷は、証


◆Side:凪


彗と携帯を買いに出掛け、15時半過ぎにマンションに帰ってくると、玄関に見知らぬ靴。

呼び掛けても返事はなくて、廊下を見るとリビングの出入り口に祠稀が立っていた。


「そこで何してんの祠稀。誰か来て……」


祠稀は気まずそうに目を伏せ、あたしはリビングに足を踏み入れる。有須が立っているその側に、靴の主であろう中年の男性と女性がいた。


「あ。こんにち、は……」


反射的に挨拶をしたけれど、なんで有須や祠稀は立ち上がってるんだろう。


ていうか、誰? そう思ったけど、あたしはすぐに理解した。


「どうし……っ!」


あたしの後ろまで歩み寄ってきた彗が、言葉を切ったから。


振り向くと、彗は目を見開き、リビングにいるふたりを食い入るように見ていた。


――親戚だ。


いつからいつまでかは知らないけど、彗をたらい回しにしてきた親戚のひとつだ。

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