僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「彗っ! やっと帰ってきたのか!」
おじさんの安心したような声に、あたしは思い切り眉を寄せた。嫌悪感が、胸に溢れる。
「なんでいるの?」
「――…」
聞いたことのない低く絞り出すような彗の声に、胸がざわついた。あたしの前に1歩踏み出した彗は、きっと怖い顔をしてる。
「何度も連絡したのに返事がないから、こうやって来たんだろう」
「……どうやってここを調べたの。俺、教えてないよね」
「そんな話をしに来たんじゃない。座りなさい、急用なんだ」
「いやだ」
「なっ!」
あたしは彗の背中越しに、おじさんとおばさんを見つめた。睨んだと言ったほうが正しいかもしれない。
……彗がこの家に来た時に話してくれたことを思い出す。
手紙のやりとりが止まっていた間に、何があったのか話してくれた彗の声は抑揚がなく、淡々としていたものだった。
今ここにいるおじさんとおばさんは、財産目当てで彗を引き取った人間でしょう?
「帰って。話すことなんてない」
彗がそう言うと、今まで黙っていたおばさんが呆れたように溜め息を吐いた。
「アナタって子は、ほんとに……1度くらい言うこと聞いたらどうなの」
――冗談でしょ。なんなの、この人。