僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「昔からそうよね。挨拶やお礼もできない、本当に失礼な子」


……自分のことを棚に上げて、よく言う。あたしがリビングに入ってきた時、おばさんだって挨拶どころか、見もしなかったくせに。


あたしは苛立ちが募って、気付けば口を開いていた。


「帰ってください」


おばさんが初めてあたしを見た。気にせず彗の隣に行き、その背中に手を添える。


彗の視線にも気付いたけど、目を合わせることなく、今度は力強くおばさんとおじさんに言い放った。


「帰ってください、今すぐに」


――彗を傷つけたら、誰であろうとあたしは絶対に許さない。


「……君も同居人とやらかね。悪いが外してくれるか。私は彗に大事な話があるんだ」

「彗が話すことはないって言ってるんです。帰ってください」


引き下がらないあたしに、おじさんは盛大な溜め息を吐く。その中には苛立ちが含まれていたけど、お互いさまだ。

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