僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「あー……ダリィ」
痛む頬をさすりながら部屋に入ると、閉まりきってないカーテンの隙間が目に入った。
すぐに目を逸らし、テーブルの上にあった携帯に手を伸ばす。
えーと……住所ってどこだっけか。
受信箱から目的のメールを探し出す。なんてことない、だけど確実に始まりであるそのメールが受信されたのは昼過ぎだった。
メールを開けば、同居にあたっての簡単な説明と≪よろしくお願いします≫という挨拶。
「……すげータイミングのよさだな」
ずっと物件を探していたけど、どれもこれもショボくて。決められずにいたら、2日前の朝方に同居人募集を見つけた。
即メールを送って、何度かメールのやりとりをしてるうちに、どうやら俺は同居人として選ばれたらしい。
……やっと出ていける。
ついさっき俺のひとり暮らしが決定したみたいだけど、言われる前から既に決めていた。
親父に“出ていけ”と言われたらすぐに出ていけるように、長いこと、この時を待っていた。
親に反抗したいとか、悪ぶりたいとか、そんなんじゃない。俺が望むものはたったひとつ。
2年前から、たったひとつだ。
いくつもの夜を、祈りながら。夜が明けるのを、憎みながら。繰り返し繰り返し、そんな闇夜を過ごしていた。