僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


なんて愚かな救い。

そう、思うのに。止まらない、やめられない。


この傷を失うのが怖いんだ。消えてしまうと思うたび、どうすればいいのか分からなくなる。


消えてほしくない。
この手首に存在していてほしい。


泣いても、どうして泣いてるのか分からなくて。泣き叫びたいのに、叫ぶ言葉が見つからなくて。


それでも訴えたい何かが、俺に小さな刃物を持たせる。


……理解、できないよね……。ごめん……。……凪。


左手首の生地から血が滲んでいたことを、凪は物凄く心配してくれた。


必死に俺の右手を退かそうとして、震える手を俺の右手に添えて。涙声で、離すように訴えてくれた。



「……違うんだよ……」


両手で顔を覆った俺の声は、くぐもっていた。


……ごめん、ごめん、凪。知られたくないんだ。


手紙をやめてしまった空白の時間にあった出来事なんかよりも、この行為を知ったら、俺はもっと凪を傷付けると思うから。


俺はもう二度と、凪を傷付けたくないんだ。


失望させたく、ないんだ――…。


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