僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
幸せの在処
◆Side:祠稀
いつもなら夕食を食べている時間に、俺と有須は凪の部屋にいた。
「凪……はい、飲んで?」
有須が差し出したのは凪が好きなココア。
目を真っ赤にした凪は、申し訳なさそうにマグカップを受け取る。
「ごめん……ありがと」
有須は俺にもココアを手渡し、自分の分をテーブルに置いた。それほど大きくない赤色の丸いテーブルを3人で囲み、誰も口を開かない。
彗が自室に入ってから凪は声を押し殺し、床にへたり込んでずっと泣いていた。
俺も有須も、ただ凪のそばにいることしかできなくて。有須はずっと、泣きじゃくる凪の隣に寄り添って黙っていた。
俺も、何も言わなかった。
……言えなかったんだ。
両手で漏れる嗚咽を必死に遮る凪の姿が、不可解でいて、痛々しくも見えて。
彗に泣き声を聞かせてしまえば傷つけるとか思って堪えているのか……。俺はそう感じて、凪を部屋に促した。