吸血鬼の花嫁
「レイシャを返して!」
私は悲鳴に似た声で叫んだ。
十字架は吸血鬼へ届く前に、少年が叩き落とす。
「おい、誰だよレイシャって…」
「あ、あなたたちがさらったんでしょ!」
銀のナイフを握りしめながら、私は二人との距離を縮めていく。
「ルー、お前の名はいつからレイシャになったんだ?」
「…いつからもなってねぇよ!」
吸血鬼は、ルーという名らしい少年に聞いた後、ちらりと私の方を見る。
人を見下すような目だ。
「ならば、眠りの邪魔だ。つまみ出しておけ」
私は頭にかっと血が昇る。
レイシャを助けたいのに!
…どこにいるの!
私は銀のナイフを構えたまま、吸血鬼へ向かっていった。