吸血鬼の花嫁
「本質的なとこは変わっておらんぞ。うむ。黒のように人や贄をいたぶることもない」
「それは、知っているけど…」
聞きたいのはそこじゃない部分だ。
心の端に引っ掛かっている。
「そういえば、先の質問に答えてなかったな。吸血鬼の恋、か。
…我ら吸血鬼は、そなたたち人の子らとそれほどには変わらんよ。血の主がいれば、それに縛られるのかもしれんが。
青いのは、始祖吸血鬼じゃからそれもないじゃろうし」
うんうん、と紫焔は独りで勝手に頷いた。
そして、人差し指で私をびしっと指す。
「じゃから、気兼ねなく好きになるがよい。どうにもあやつは鈍いから、はっきり言わねばならんじゃろうが」
「え、えぇ…がんばるわ…」
紫焔の剣幕に押されて、私は思わず頷いていた。
いつの間にか、紫焔の中では、私がユゼを好きだということになっているらしい。
確かにそれは真実なのだが、紫焔に向かってはっきりとそう言った記憶はない。
まるで、好きになれと言われているみたいだ。
「そろそろ、ルーの機嫌がなおっているといいんじゃが…」
私の戸惑いを知ってか知らずか、ベットの上の紫焔が憂えたため息をつく。
小さな子供のようにしょんぼりした姿に、ぴん、と私の第六感が閃いた。
初めて会った時の私に対する態度。
そして、私とユゼを無理矢理くっつけようとするかのような言動。
そして、先程のため息。
それら全てが一つのことに繋がっていく。
「…もしかして、貴方はルーのことが好きなんじゃ」
紫焔の動きが一瞬止まった。
だから、同じ館に住んでいる私の顔を見に来たのだ。
「そ、そんなわけないわけないじゃろうっ」
動揺していて気付いていないが、紫焔はおもいっきり肯定をしていた。
そんなわけないの、わけないが、一つ多い。
「そうなの…」
かぁと紫焔は普通の少女のように白い頬を赤らめた。
何だか可愛いらしい。
目の前の少女を初めて親しみを覚えた。
紫焔は言った。
人も吸血鬼もそれほどには変わらないと。
それは、自分自身の体験から来る言葉だったのかもしれない。