吸血鬼の花嫁





私は編物をする手を止めた。

暖かな橙色の手袋とお揃いのマフラーがもうすぐ出来上がる。

もちろん、ルーに渡す用だ。

誕生日のために作っていたわけではないけれど、結果としてそうなりそうである。


「来年はミルフィリアも呼ばないと」


今年は急ぎ支度なので無理だが、話を聞けばきっと来たがるに違いない。

だったら、来年また行えばいいのだ。

ハーゼオンも呼べば、もっと賑やかになる。


本人は、あまり歓迎しなさそうだけど。


嫌そうな顔が簡単に想像できて私は笑う。



ユゼはルーの名前をちゃんと考えてくれているようだ。

内心、心配をしていたのでほっとする。

朝、顔を合わせた時にそれとなく聞いてみたが、秘密だと言って教えてくれなかった。

知りたかったけど、やっぱり一番最初に聞くのは、私ではなくルーであるべきだろう。

そう思い直し、私は素直に諦めた。


その後、ユゼに間へ入って貰いながら、家妖精と料理の相談をした。

大きなケーキを作ってくれるらしい。

ルーには頑張って食べて貰わなければいけない。


…そういえば、どうして急に家妖精が見えるようになったんだろうか。

姿は見えるようになっても、声は相変わらず聞こえないままだった。

ユゼにはちゃんと聞こえているらしい。

家妖精の言葉をきちんと私に伝えてくれる。


ユゼに理由を聞こうと思っていたのに、また忘れていた。


「困ってないからいいんだけど」


でもやっぱり不思議だ。


ふっと、手元に目を落とす。

残り後少しで編み上がるマフラーがあった。

今はそんなことを考えている場合じゃない。

今日か明日ぐらいにはルーが帰ってくる。

それまでに間に合わせなきければいけない。


窓の外では雪が静かに降り出していた。

穏やかな優しく、ひらひらと。


私は手を急がせた。



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