吸血鬼の花嫁
吸血鬼は椅子から立ち上がると、近づいてきた。
私は思わず身構えて、布団をぎゅっと握りしめる。
「目が覚めたのなら、さっさと出掛ける支度をしろ」
偉そうな口調でそう言うと、少年に向かって目配せした。
少年は頷くと、急いで部屋から出ていく。
「あ…」
行かないで欲しかった。
部屋の中で吸血鬼と二人なんて、どうしたらいいのか分からない。
部屋の中がシンと静まり返った。
気まずい。
「……どこへ、行くの?」
恐る恐る上目に吸血鬼を伺って聞いた。
吸血鬼は相変わらず寒々しい表情をしている。
どこかに暖かい感情を忘れてきてしまったかのようだ。