吸血鬼の花嫁
「レイシャとやらを助けたいんじゃなかったのか?その者が生きていようが死のうが、私は構わないが」
思いがけない言葉に私は吸血鬼の袖を掴んだ。
「助けて、くれるの…?」
「人の子には、間抜けにも私を刺そうとする者がいるようだしな」
吸血鬼は馬鹿にしたような笑いを浮かべて私を見ている。
…私のことを言ってるのか!
遠回しに間抜けと言われて、私はむっとした。
だが、すぐに先程の言葉を思い出す。
この人はレイシャを助けると言ってくれたのだ。
「……レイシャを助けるって言ってくれて、ありがとう」
私の礼に吸血鬼が僅かに目を丸くする。
初めて見る顔だった。
「まだ助けていないが」
「でも、貴方だけだったから」
レイシャを助けると言ってくれたのは。
周りの皆が諦めろと言った中で、初めての言葉だった。
それだけでも、嬉しかったのだ。
吸血鬼の顔がほんの少しだけ曇る。
「…気にするな。ただで、というわけではない」
「え…?」
何を、と聞こうとしたその瞬間、部屋の扉が音を立てて開いた。