吸血鬼の花嫁


お茶の後はルーの案内で館を一回りすることになった。

書斎に地下へ続く階段、様々な部屋を見てまわる。

館は迷ってしまいそうなほど広かった。


そして、静かだ。

私とルー以外の気配がしない。

静謐、そんな言葉がよく似合う。館そのものが柩みたいだ。


「あなたと私、吸血鬼以外の人は?」


…人ではないかもしれないけど。


「えーと、俺らの他には家妖精たちがいるけど、表には出てこないな。俺よりもずっと昔からこの館にいて、館が痛まないように守ってる。吸血鬼は面倒くさがりやだから」

「へぇ、会ってみたいわ」


家妖精という響きに思わず食いつく。

かわいらしい小人のような姿なんだろうか。


「館の者たちから隠れたところで仕事をするのが彼らの信条だから、無理には探さないように」


私の心を見透かしたようにルーは釘を刺した。


「…そうなの、残念ね」

「そういう風に生きてる者たちだから。時々、そっと労ってやればいい。

で、ここが、我らが花嫁の部屋だ」


立ち止まったルーは、もったいぶりながら部屋の扉を開けた。



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