吸血鬼の花嫁





どのくらい眠っていたんだろう。

夢も見ず、瞼の闇から目を覚ました。頭がぼんやりしている。

自覚するより、ずっと疲れていたようだ。

部屋を見回したが、ルーの来た気配はない。


「水が飲みたいわ…」


冷たい水があれば、頭がはっきりするかもしれない。

喉も渇いていた。

だけど、どうすることも出来ず、ベットにうずくまる。


ふと、部屋の景色に違和感を感じて顔をあげた。

いつの間にかテーブルの上に、硝子のコップが置かれている。

私は首を傾げた。

先程までは、なかったはずだ。


「飲んでもいいのかしら…」


テーブルに置かれた水は冷たく澄んでいる。汲まれたばきりのように見えた。

ここは私の部屋のはずである。

と、いうことは誰かが私のために用意してくれたのだろう。


「ルーかしら」


その答えには、なんだか納得がいかない。

目が覚めた時には、このコップはなかったのだ。


迷いながらも、一口口をつけてみる。

喉を清涼な流れが落ちていった。


「美味しい…。誰か分からないけど、ありがとう」


私はコップに向かって礼を言う。

すると、またいつの間にか、テーブルの上に花が置かれていた。

雪の中に咲く、雪代草だ。

雪代草は誰かを歓迎のする時に飾る花である。花の少ないユゼでは、特別な時にしか花を飾らない。

悪意のある行為ではないように見える。


「一体誰が…」


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