吸血鬼の花嫁


助け舟を出すように、ルーが話に割り込んで来た。


「例えるなら、誰かと遊んで楽しかったけど、後になって、誰かは頼まれたから自分と遊んでくれただけであって、別に自分と遊びたかったわけじゃない。と、いう事実を知ってしまった。

楽しいと記憶されたものが、後から知った事実によって嫌な思い出として記憶されてしまう……みたいな感じなんじゃねぇの」


ルーの解説を聞いていると、熱が出てきそうだった。

なんなく分かったのは、とてもとても遠回しな話だけれども、吸血鬼は人と仲良く付き合っていた記憶がある。

だけど、何かきっかけになることがあったせいで、楽しかった記憶を快く思っていない、ということ。


それはともかくとして。


「もう少し分かりやすく話せないの…」


私は思わず愚痴を零す。

すぐに意味が分かるルーは流石だ。私には真似できない。


「花嫁、吸血鬼に期待するより、自分が慣れた方が早いぜ」

「……確かにそうかも」


長く付き合っているルーが言うのだから、吸血鬼に分かりやすく話してもらうのは、至難の技なのだろう。

的確なアドバイスに、私はルーと顔を見合わせて笑う。


件の吸血鬼が一人、きょとんとした顔をした。



< 75 / 155 >

この作品をシェア

pagetop