吸血鬼の花嫁
助け舟を出すように、ルーが話に割り込んで来た。
「例えるなら、誰かと遊んで楽しかったけど、後になって、誰かは頼まれたから自分と遊んでくれただけであって、別に自分と遊びたかったわけじゃない。と、いう事実を知ってしまった。
楽しいと記憶されたものが、後から知った事実によって嫌な思い出として記憶されてしまう……みたいな感じなんじゃねぇの」
ルーの解説を聞いていると、熱が出てきそうだった。
なんなく分かったのは、とてもとても遠回しな話だけれども、吸血鬼は人と仲良く付き合っていた記憶がある。
だけど、何かきっかけになることがあったせいで、楽しかった記憶を快く思っていない、ということ。
それはともかくとして。
「もう少し分かりやすく話せないの…」
私は思わず愚痴を零す。
すぐに意味が分かるルーは流石だ。私には真似できない。
「花嫁、吸血鬼に期待するより、自分が慣れた方が早いぜ」
「……確かにそうかも」
長く付き合っているルーが言うのだから、吸血鬼に分かりやすく話してもらうのは、至難の技なのだろう。
的確なアドバイスに、私はルーと顔を見合わせて笑う。
件の吸血鬼が一人、きょとんとした顔をした。