その日、僕は神になった
 夏休みも半分が過ぎた。この楽園のような日々も、着々とその終焉に向かっている。こんな時間が永遠に流れればいいのに、明日朝目覚めたら、もう一度夏休み初日に戻ればいいのに。そう思うのは毎年のことだが、去年までのそれと今年のそれでは一つ違いがあった。去年まではぐうたらしていたい、ただそれだけだったが、今年はもっと重要な理由があった。夏休みの終わりは、イコール彼女のバイトの終わりを意味するのからだ。
 三年になり彼女とクラスが別れ、それからは教室の隅から彼女の姿を盗み見ることも出来なくなった。たまに、本当にたまに廊下ですれ違った際に、チラッと盗み見ることしか出来なくなっていた。こういう時に俺は自分の交友関係の浅さを恨んだ。彼女のクラスに親しい友人でもいれば、それを理由に彼女のグラスに出入りできたのに…。そんな中で起こった奇跡、あのコンビニに通いつめ、一言二言は言葉を交わせるようになった。それはまだまだ会話と呼べるレベルには程遠いかもしれないが、俺からすれば立派な進歩だ。だがそれも後二週間もすれば終わってしまう。学校が始まっても、廊下ですれ違った際に挨拶くらいはしてくれるだろうか?いや、そんなことをしたら、彼女まで周りから変な目で見られてしまう。お釣りと共に送られるあの微笑みは、時給八百円の効力しかないのだ。
< 209 / 368 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop