感方恋薬-知られざる月の館-
「そうは言うがなぁ、貴子よ。あの、幸雄とか言う学生、只者では無いぞ。これ程いとも簡単にわしらを呼び出すことが出来るんじゃからのう」


「だから、簡単に呼び出されないでって言ってるじゃない」


「うむ、まぁ、そうは思うが、こればかりは、呼んだもの勝ちという事になぅてしまうからのう」


あたしは爺の話を聞いて、精神世界と言うのも、意外といい加減な物だなぁという感想を持った。


でも、その感想今更かと思いなおした。だって、こんないい加減な爺が居る世界だもん。


「それで、何?何か用事?」


あたしの言葉に爺はわざとらしく手を打つと、


「そうそう、忘れておった。貴子よ、ちょっとこちらへおいで」
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