感方恋薬-知られざる月の館-
「はいはい、分かりました。御爺様、今日も貴子はあなた様の元に遊びに参りましたよ」


そう言って、心の底からおべっかを使うと、爺の機嫌も良くなった様で、あたしに対する棘がすっと無くなったのを感じた。


全く、困った年寄りだ…


「ところで貴子よ、あの巻物はちゃんと読んだかな?」


「あ、あぁあれね。今、一生懸命読んでる処だよ」


爺は髭を弄びながら、かっかっかと笑いながら「そうか、ちゃんと読むのじゃぞ。なにしろ、貴子の将来に重要な事が書いて有るからのう」そう言うと再び笑いながら、あたしに向かってくるりと背を向けた。


「お、おい、爺、あたしの将来に重要な事って何の事だ?レベル2の呪文じゃぁ無かったのか?」


あたしは爺にずいっと詰め寄る。


「なに、巻物を、真面目に読み解けば分かる事じゃ」
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